月夜見
 “師走の風景”

     *TVスペシャル、グランド・ジパング ルフィ親分シリーズより

 
ここ数年ほど、
春も夏も秋も冬も微妙な気候というのが続いているが。
今年は特に秋がなかったようなもの。
ずんと猛暑だった夏が、
随分 長々と尾を引いたのに圧倒されたか、
それらしい涼風が吹いても すぐさま

 『いつまでも暑いねぇ』
 『まったくだよ』

そんな風に ついついこぼすようなお日和が戻って来。
季節の変わり目できっぱりと
次の季節の着物に取っ替えるのが粋とされてる
ご城下の粋人らの間でも、
ついつい、いつまでも
(ひとえ)の小袖を愛用してしまった人が多かった。
だがだが、さすがに師走ともなると、
風の冷たさも凍りそうなそれとなり、
あらわな肌が寒いというだけじゃあない、
立ってる足の裏からという文字通りの“底冷え”が、
じんじんと突き上げてくるような冷たさで襲い来て。
通りを行き交う人々も、
皆して肩を縮め、さかさか足早に行き過ぎるばかり。
低いめの軒に提げられた、
看板やのれんをはたはたたと叩きつつ、
風籟の唸りと共に吹き抜けてった木枯らしの中。
見慣れたお顔がやって来たものだから、
ついのこと、お声を掛けていた雲水姿のお坊様。

 「おや、親分さんじゃねぇ……か。」
 「おお〜〜〜。」

途中で声がしぼんだのは、
相手の様子が妙だったからであり。
一言で言うなら、何だか妙にしなびておいで。
細っこい腕脚なのも、
鋼のような頑丈さ、鍛えぬいた自分に比べりゃ、
まだまだ幼い体つきな彼なのも前から承知。
そういうところが今更怪訝だというんじゃなくて。
理由は聞くまでもないと言いますか、
まだまだどこか子供っぽい仕様の手が
すりすりさすっているのが
いつもの赤い格子柄の着物の、
帯を締めてる腹辺りと来て。

 「…もしかして腹ぁ減ってるんすか?」
 「まぁな。」

だったら、そうそう、
いつもの屋台のソバに寄って来ませんかと、
促しかかったものの、

 「…………。」
 「何か疚しいこと天こ盛りって顔してませんか?」

 「………っ☆」

そそそ、そんなこたぁないないと、
どこか慌てて大きくかぶりを振っての、

 「でぇいち、俺、腹なんて空いてねぇしよ。」

打ち消すように言いかかった親分だったものの。
そんなお声を遮って、

  ―――ぐぐう・きゅうきゅるきゅる…、と

そりゃあ大きく鳴いて自己主張したのが腹の虫と来ては、
説得力が無さすぎる。

 「あすこの親父さんならツケも利くっすよ?」
 「いや、だからよぉ。」

この、何につけ開けっ広げで天下太平、怖いもん知らずなはずの親分さんが、
うにむにと口許をたわませて煮え切らぬお顔をするなんて。
意外や意外、天変地異でも起きるかも知れんぞと、
彼をよくよく知る人ほど、
違和感満載だと思ってしまいそうな態度になってしまい。

 「  …………。//////」

もしもし? お坊様?
あ、今“畜生め、可愛いじゃねぇか ///////”とか思ったでしょう、あんた。

 “うっせぇよっ。///////”
←あ (笑)

 「いやその、何でまたそんなに腰が引けてんだ?」
 「だから。師走もこうまで押し迫ると、掛け取りも厳しくなっからよ。」
 「…………あ。」

この時期のお話にはお馴染みの風物詩。
毎日 立ち寄ってるようなお店屋さんでの“あるとき払い”、
いわゆる“ツケ”の取り立てのことを“掛け取り”といい。
昔むかしは、最終決算日に当たろう師走の最終日を越えると、
翌年に繰り越し…というのが、どんなお店でもという倣いでもあったとか。

 「いや別に、踏み倒すことを前提に構えてんじゃねぇんだが。」

日頃の捕り物の中、あっちこっちで物を壊すことでも費えは絶えずという身。
それは職務かかわりなことだから まま置くとしても、
そこも悪魔の実の能力者だからか、何たって大食漢な親分さんなので、
どんな店へも多かれ少なかれ、いやいや多かればかりだろう借りがある。
よって、

 「そっか。店屋へ立ち寄れば多少なりとも話題にはなるか。」

彼の行きつけ、付き合いのあるお店ともなりゃ、
どこか人の良い主人ばかりだ、
半分でも良いからさなんて冗談ぽく笑いながら言われるだけで、
払え返せと詰め寄られることは滅多にないらしかったが。

 “それも凄げぇよな。”

まったくだ。
(笑)

 「ただなあ、盛りの一番多いナミんとこだけは、
  容赦なく払ってくんなきゃ今年のうちは食わせねぇって。」
 「そんな言いようしやがりますか、あのアマ。」

こらこら、言いようが乱暴だぞ、聖職者。
悪い奴らをしょっぴくという危険なお務めこなしておいでの親分へ、
そんな業突張りを言いますかそやつ、と。
まんじゅう笠の下、切れ長の双眸が妙に冴え冴え尖ったようで。
それへと招かれたか、
おおっと どっからか旋風までびゅうと吹いたもんの。
うっすらお怒りな坊様と違い、

 「気持ちは判るし、悪いのは俺のほうだかんな。」

たはは…と苦笑したお顔が、されどどこか力ないぞ、親分さん。
理屈は判っておいでの上だからこそ、
しょうがねぇさねと納得もしておいでのこの始末らしいもんの、
ああでもでも、いざ何かあったとして、
そんな元気のなさで悪党を追いかけられるのか。
いやいや、そんな建前なんてどうでもいい。

 「…判りました。」

ええもう、腹一杯食わせてやりますともと、
いざという時、幕府まで駆け戻るための路銀や武装費、
こっそり支給されたばかりの俸禄を懐ろに握り締め、
これが原因で任地替えとなっても悔いはないと、
随分と健気な決意をしたらしい、実は隠密のお坊様。

 「俺の顔が利く飯屋があります。」

托鉢のたび、お布施をたっぷり下さるお方です。
一度くらい客として立ち寄っても罰は当たりますまいと、
猫背撫で肩になってる小さな身を、
ポンポンと励ますように叩いてやれば、

 「そか?」

にひゃっと力なく微笑ったお顔、
あああ、この子のためだったら俺は死ねる…とまで思ったかどうか。
胸元を鷲掴みになさったところを見ると、
まんざら遠くはないこと、
思ったらしいお坊様だったのでありましょうて。
(う〜ん)




     ◇◇◇



 さて、同じ寒空の下の一膳飯屋“かざぐるま”では、

 「よお、昼飯………って、何か空気が重くねぇか?」

 日頃は長閑なご城下なれど。師走の町中ともなりゃあ、物の流通が盛んになる どさくさに紛れ、食い詰めた人までもが他藩から入り込む。そういった輩による、置き引きや掏摸への警戒も必要となるため、同心や岡っ引きたちは、より警戒して町を見回らねばならぬ。そんな警邏の合間、何にも起きぬ暇間のうちにと、昼ご飯を食べに来た長鼻の下っ引きさんだったが。踏み込んだ途端、いつもそれは暖かいはずの店内が、外の冬空より何倍も冷たい風が吹きすさんでいるような感覚が、びゅううっと襲い掛かったような気がして。これもそのせいだろうか、昼時なのに他には客の姿がない中、おい いらっしゃいと湯飲みを運んで来た金髪頭の板前さんへ、

 「一体何があったんだ?」

 片手を口許でついたてにし、こそりと声をかけたれば。やや俯いての咥えた煙管の先へと火を点けたサンジが、ちろりんと…前髪の陰から、片側だけ覗く視線でもって示したのが店の奥。何だなんだと、それへ釣られるようにして、自分の視線を流したウソップだが、

  「   …っ、わっ、暗っ!」

 一体どこへ生霊を飛ばしているものかと訊きたくなるほど、虚ろな目元に青ざめた頬という、萎れ切った表情をしたこちらの女主人が、生気もないままという項垂れようで、奥まった席の膳に突っ伏している。日頃の闊達さからは掛け離れ過ぎ、あまりに驚いたか、おおおっと跳び退きかねんばかりになってののけ反ったウソップだったが、

 「ななな、何があったんだよ、これって。」

 おっかない筋の客からの忘年会の予約でも受けちまったか、それとも金に目がくらんで、おせちのあり得ない大量注文を受けちまったもんの、今頃になって不可能だと我に返ったか、と。何しろこの場には脅威になるものが見当たらないし、そもそも よほどのことでもなけりゃあ“ま・いっか”を繰り出して受け流す、大雑把なルフィのことを言えない“太っ腹”楽観主義者なはずの女将なだけに。一体何をそうまで、判りやすく打ちひしがれているものか、気にならぬ方がおかしいくらい。とはいえ、本人は心ここに在らずという態であり、

 「原因はあれだあれ。」
 「あれって? …………げ。」

 ナミが突っ伏す4人掛けの膳の上には、切り餅と呼ばれる金の包み。似たような小道具をわざわざ作ったんでなければ、一包み金25両がくるまれた、小判の束だということで。それがひのふの…8つも積まれてあるからには、

 「いいいいい、一体どんな無体な注文受けたんだ?」

 くどいようだが、このお話の大元のパラレルシリーズは、決して 日之本の江戸時代が舞台じゃないらしい。とはいえ、そうとした方が馴染みが善さそうな設定も多いので、ウチのお話では 江戸幕府が別にあっての、此処はグランドジパングという藩だということにしていただいている。そんな江戸時代の通貨というと、

 『お代官様、ヤマブキ色のまんじゅうでございます。』
 『お主も悪よのぉ、ふっふっふ。』

 なんていう場面に賄賂
(まいない)として出て来たり、何とか小僧と名付けられた怪盗が肩にかついで逃げ出す金箱や、はたまた、御用金だ どけよどけと、大人数で移送されてる、荷台にくくられた山ほどの千両箱なんてのがありますね。あと、ぐっと庶民のお話としては、落語の“時そば”が一杯16文。お武家様の悪巧みやそういう人に取り立ててもらおうという大店の企みなのでと、時代劇ではいとも容易く小判がほいほいと出て来ますが、江戸時代の通貨は微妙にややこしいレートで運用されていて。まず、金貨か銀貨か銭かでレートが別々になっており、金1両が銀だと60匁、銭だと5貫文(5000文)で同等となる。また、物の物価が、今とはちょっと違ってたりもし、1両は、単純にお米の価格で割り出せば、現在の6万から10万くらいの値打ちになるが、これが賃料になると30万くらいの扱いとなる。何だか妙な理屈だが、実際、様々な文献から計算したお人によれば、そば一杯が16文の頃、米1升は120文、同心の年棒、70俵5人扶持は 金で28両だったそうで。江戸の頃といや、ご領地で収穫された米を、扶持や禄としてもらった侍がそれを札差で金に換え、そこから初めて、米以外の生活必需品を揃えましょうというのが物流経済の順番。札差は当然、手数料も取ったでしょうから、米とその他の価格に微妙な差異も出来たでしょうし、先に貨幣ありきの現在とは違うので、そういうことにもなるんでしょうね。

  ………で、そんなレートのご時勢に、

 「何をどう喰ったら二百両になんだよ、おい。」

 つか、年始にあたっての特別な仕出しか何か、そんな大量で大層な料理を作れとか言われたんかと。だとしたら“当事者”のサンジへ問いただしたウソップだったのへ、いやいやという意味合いか かぶりを振って見せた彼であり。

 「ルフィのツケをな、気前よく払ってくれた人がいたんだよ。」

 板前さんもまた、すぱぁと煙草の紫煙を吐き出したついでのように すっぱりと応じたものの。

 「親分の?」

 あのお人なら もしかしたなら二百両くらい食らい尽くしかねんなと、そこまでの勢い込んでた口調がふわんと緩んだ下っ引きさん。とはいえ、

 「そんな大枚を出せるよな人って?」

 そこへの理解がやはり追いつかぬ。まさかまさかの、ビビ王女がまたぞろお忍びで来てたとか? それか、何かしらの事件で世話焼いた格好の、他所の藩の代理人か何かが、例の件は他言無用と口止め料を置いてったとか……。

 「あの親分は、そんなどうでもいいことほど すぐにも忘れんだがな。」

 あはは…と乾いた笑いようをしたサンジは、その謎のお人とナミとのやり取りがあった場にも当然居合わせたのだろう。傍らの卓の上、置きっ放しになっていた煙草盆の真ん中に立った竹製の吐月峰
(はいふき)へ、煙管の雁首、手馴れた所作にて こんっと叩きつけると、

 「そのお人は俺たちにも見覚えのないおっさんでな。」

 おもむろに、そんな風に説明を始めた彼であり。夜回りの帰りや はたまたこれから市場や河岸で働くぞという、朝一番のお客たちが一段落し。昼ご飯に向けての仕込みを始める前の、ほんの一刻の一休み。渋いお茶でも啜りつつ、ああそういや、お節や仕出しはそろそろ締め切りだねなんて、今時の話なんぞを紡いでいたところへ、

 「すっかりと色の抜けた白髪の蓬髪、顎にたくわえてた髭も真っ白の、
  結構な年頃の爺さんがひょいと入って来てな。」

 結構な年頃…といっても、老爺というほどくたびれちゃあいない。矍鑠としたという言い回しがあるが、それどころじゃあないくらいの屈強精悍。まだまだ充分に男臭いほどの御仁でな、と。女性には目がなくマメだが、男は人として数えてもないんじゃあなかろかというこの板前さんが、そこまで称賛したほどの男ぶりをたたえたお人だったらしく。

 「着ている物は商人風のこしらえ、
  袷
(あわせ)の着流しに白っぽい羽織という装いだったが、
  足の運びや物言いからして、お武家だな、ありゃあ。」

 得物を帯びてた訳でなし、お付きの人もいなかったけれど。薄くなりかけの古傷をさりげなく隠すためか、舶来の丸めがねを掛けた目許の冴えや。終始屈託なく微笑っておいでだった寛容そうな態度の地盤として。突然 天変地異が起きたって、微動だにせず対処出来そうな、そんな底知れぬ技量のあることを、何も語らずの、落ち着きのある態度のみから知らしむるよな奥深いお人だったようで。ごめんと暖簾を掻き分けて入ってくるなり、

 『こちらは、麦ワラの親分のご贔屓のお休み処かの?』

 お初の場だというに毅然と、そして鷹揚そうに声を掛け。口へとほうり込んだばかりだった蜜柑へむせつつ、はい さようでと、お出迎えにと立ち上がったナミへ、それこそ惚れ惚れするような頼もしい微笑を向けると、

 『今はおいでではないようだの。』

 狭くはないが、それでも一瞥で充分見回せる店内に、名指ししたルフィ本人の姿がないのを確かめたお武家様。特に落胆なさった様子ではなかったものの、

 『親分に何か御用でも?』

 恐らくご城下の見回り中だろうから、この時間帯では、番屋に行っても居るかどうか。そっちを先に当たってのこっちへ来たお人かも知れずで、

 『じきに昼どき、親分も大概は此処で昼を食べてかれます。』

 何なら此処でお待ちになれば…と、手元を前掛けで払いつつナミがそうと薦めたところ。思案しての少しくらい迷って見せるかと思いきや、やはりにこりと笑ってから、

 『いや何、これといった用向きが在る訳でもないのだが。』
 『はい?』

 いやにあっさりと、そんなお言いようを返して来なさる。わざわざの名指しをしたのに、何ですかそりゃ?と。ナミとサンジがキョトンとしておれば、

 『そうそう。彼はなかなかの大食漢と聞いている。
  こちらへもさぞかし、ツケをためておいでじゃあないのかな?』

 何とも唐突に、そんな話題を振って来た。内緒ごとを探るというよな気配はなくの、むしろ…ご自身の甥御が世話を掛けてはないかというよな訊きようで。だがだが、あの親分は正真正銘、町生まれの平民の出。武家のご落胤だの、遠い縁故だのとは思えない。

  となると

 これはもしかして、親分が秘密裏に何かしらの助力をしたことで、お身内やらお立場やら救われた、そんなお武家様なんじゃあないかしら。その恩返しにと こそり訪のうた、ご家老様とかだったりして?なんて。まさかね ありえねーと、思う端から自分で笑い飛ばしつつ、

 『ええ、ツケなら たんと。』

 下町育ちのちょっとした冗談グチ、そりゃあ朗らかに笑いもって、

 『ほんのちょっぴりの二百両ほどですかしらvv』

 そんな馬鹿な、あっはっはっは…と和やかに笑い合って終しまい、となる筈が。確かに痛快痛快と笑って下さったところまでは、想定した通りの運びであったものの、

 『さようか、そうまで健啖家であったか。』

 ………………………はい?と、こちらの二人の笑いが止まり。

 『幸い、此処に持ち合わせがちょうど二百ある。』

 ………………………えっと?と、どういう意味なのかを飲み込めずにいた、一旦停止状態の彼ら二人を前に。袷の懐ろ、ごそりとまさぐると。そこから 袱紗に包んだ塊を一つ、大きな手の中へ余裕で掴んで引っ張り出して…。

 「………で。置いてったのか、その御仁。」
 「ああ。」

 こっちが 目が点になっての一時停止になってる隙に、この切り餅を袱紗から取り出しての 積み上げ置いて。“ではな”って とっとと出て行っちまってよ、と。淡々と説明していたサンジの声が終わらぬうち、

 「あああ〜〜〜。
  ちょっと考えてみりゃ
  大嘘だってのは判ったはずでしょうにぃ。」

 いきなり甲高い声になり、どうしよどうしよと狼狽えるナミというのがまた珍しく。まま確かに、この規模の店がそうまでのツケ、どんと来いと引き受けての立て替えるだなんて、無理だというのは ちょっと考えれば判りそうなことであり。

 「何だよ、日頃のがめつさからいや、
  まんまとせしめたって笑って喜ぶところじゃねぇのかよ。」

 お金大好きのナミで有名じゃんかとウソップがまぜっ返せば、すかさずのようにサンジの手が煙管を振り下ろし、

 「あほうっ。」
 「痛っ!」

 何すんだっと、痛かった頭を押さえ、抗議の声を上げる下っ引きさんへ。ずいとこちらからも身を乗り出して。

 「ナミさんはそういう“悪事”は嫌いなんだよっ。」
 「う……。」

 これが、物の値打ちも判らぬ、単なる見栄っ張りのやらかしたことならば、あなたが勝手にそうと値をつけたんだしとの解釈の下、有り難く頂戴しもしたことだろが。ああまで立派なお人の仕業では、そうもいかぬ。しかも、額が額だけに、

 「後日になってご家中の人とかが、
  ようも我が主人を騙くらかしおったなって、
  敵討ちに殴り込んで来たらどうしよう〜〜〜。」

 そんな大事になったらと、さすがにおっかながっているのかと思や、

 「そうと思うと
  使えないじゃないのよ、こんなにもらってもォ。」

 「……そこかい。」

 ああ、そうかいそうかいと。彼女らしいことへの案じへ、納得したような、気が抜けたような、複雑な感慨を受けたらしいウソップさんだったが。そんな彼とは また別な感慨、

 「二百両かぁ。それこそどんだけ法外な金子だよと思う気持ちと同時、
  けど、あの親分なら、
  数年しか保たねぇんじゃなかろかとも思えるのは俺だけか?」

 吸いつけた煙草を捨てた後の煙管、ふっと強めの吐息を吹き込み、そのまま苦笑がこぼれて止まぬサンジさんだったようで。そして、

 『大目付のレイリー老が、秘密裏にこの藩へお運びだとのこと。』
 『〜〜〜〜〜〜っ☆』

 立ち寄ったソバ屋の屋台で、ドルトンさんからそんなとんでも情報を聞き。なんだってなんでまた…幕府の方だって師走で忙しいときだろにと。眸を白黒させる、実は公儀の隠密様だったりするのであった。



   本当に色々とあった一年でしたね。
   政府も今一つ頼りにならないようですし、
   お天気のほうもなかなか落ち着いてくれませんが、
   新しい年にこそ 期待しましょう。
   皆様、よいお年をvv




   〜Fine〜  11.12.28.


  *こんなところで補足を少々。
   目付というのは、
   江戸幕府の内にあって、
   若年寄の耳目として、旗本や御家人を監視する役職のことで。
     大目付はその上、大名の監査を担当した役職だとのこと。
   言わずもがな、大名がこっそり力をつけ、
   幕府転覆なんてな謀反を構えぬようにという監視をするのであり、
   中には、出る杭を叩くどころか
   出る前に凹ますくらいの粗探しをしたお人もあったようでして。

   「グランド・ジパングは
    思わぬほど豊かなところが油断なりませぬぞ」

   なんていう、悪い意味での仄めかしを受け、

   「では、儂が直々に見聞して来よう。」
   「…………はははは、はい?」

   そいで立ち上がった大目付様なんだったりしてな。
   しかもしかも、
   大目付の長たるお人が“問題なし”との太鼓判を押したらば、
   それ以降、ケチの付けようがなくなるワケで。
   しまった、そこまであの藩を買っておいでかと、
   讒言した格好になったお人は震え上がるかもで……。

   ……という裏話は、
   御庭番ゾロさんはともかく、
   ルフィ親分にはよく判らない“大人の事情”でしょうから
   割愛させていただきました。

   「ロロノア殿、来期も国替えはなくってよかったの。」
   「……もしかして、それを言いに来ただけっすか?」(おいおい)


感想はこちらvv めるふぉvv  

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